九州産直通信

故人を想って贈りたい…そんな贈り物には? 【熨斗(のし)のはなし】 弔事用

こんにちは。九州お取り寄せ本舗スタッフです。
当店では九州のプレミアムな”食”を産地直送でお届けしており、多くの方にギフトとしてもご利用いただいています。
そんなギフトには欠かせない熨斗(のし)の使い方や豆知識等をまとめてきました。

第一回では、蝶結び(花結び)の水引を使う熨斗についてご紹介しました。
蝶結びの水引は、「何度あっても嬉しい」という想いが込められており、御中元や御歳暮、出産祝いや長寿のお祝い等、さまざまなお祝い事に使用できます。
第二回では、一度きりであってほしいお祝いのときに選ぶ「結び切り」の熨斗紙について説明してきました。
第三回目となる今回は、弔事用の掛け紙について説明していきたいと思います。
※前の2回で説明したように、熨斗はお祝いの意味を持ちます。そのため、熨斗紙は弔事用に使うものにおいては「掛け紙」と呼びます。

1.弔事用の掛け紙はどんな時に使うのか

弔事用の水引は、ご不幸があった際に使用するものになります。つまり、「二度とあってほしくない」贈り物に用いられます。
例えば…

香典、御仏前、またそのお返し。
掛け紙の見た目は以下のようなものがあります。

・佛水引(藍銀水引)(左が銀、右が藍色の結び切り)

仏教・神道・キリスト教など各宗教共通に通夜・葬儀告別式・法要のときに、ご不幸のあった家への贈り物、またはその香典返しの粗品として使われます。
蓮の絵が入ったものもあり、そちらは仏教の場合に同様の意図で使われます。
仏教では、渡す時に「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷様です」と伝えると良いでしょう。
神道では、仏教とは死に対する考え方が違うため、「御霊(みたま)のご平安をお祈りいたします」と言葉をかけます。
結び方は結び切りかあわじ結びで、水引の本数は5本か7本です。
(水引の本数については結び切りの記事を御覧ください。)

・キリスト教用の佛水引(藍銀水引)

水引については先程の佛水引と同じですが、画像のような絵が入った掛け紙や袋を使うこともあります。
カトリックの場合は無地か十字架、ユリの花が描かれたものを、プロテスタントの場合は無地か十字架の描かれたものを使用します。
菊の花が描かれたものもあり間違えそうですが、菊の花は仏式のものになるのでご注意を。
渡すときには「安らかな眠りをお祈りします」と伝えると良いでしょう。

・黄水引(黄白水引)(左が銀、右が黄色の結び切り)

こちらは主に京都などの関西で使われており、公家社会の作法に由来しているのだそう。
京都の公家社会では贈り物に紅白の水引を使っており、それと間違えないよう黄色の水引を使ったとか。また、黄色は黒の次に高貴な色であったことも由来のひとつです。
関西の都市部で、宗教に関わらず通夜・葬儀告別式・法要の際、不幸のあった家が香典返しとして贈るものに用いられていましたが、喪の意味合いが強すぎるため最近では「黄水引」を用いる地域が増えています。
同じように、仏教以外の神道やキリスト教の通夜・葬儀告別式・法要の際には「仏」の意味合いが強い「佛水引」は避け、「黄水引」を使う方が適切です。
とはいえ関西でも、葬儀や初七日は白黒、四十九日以降の法要では黄白を使うのが一般的ですが、地域や各家庭によって異なる場合も多いので、できれば前もって親族に相談するのが良いでしょう。

【どうして弔事用は白黒の水引なの?】
仏事と関係のあるのしの起源は「昆布」なのだそう。昔は高級品で貴重な昆布は、お寺への供養料、亡くなった方へのお供えとして使われていたようです。
この昆布のイメージから、弔事用の熨斗には黒白または緑ののしが使われるようになりました。
また、仏事などの精進中は、基本的に「生もの」はタブーというのは聞いたことがあるのではないでしょうか。そのため、第一回で説明した「熨斗アワビ」は、アワビという生ものを意味するので、弔事用の掛け紙にはついていません。

【どうして弔事用は薄い墨で表書きを書くの?】
弔事用の掛け紙に表書きや名前を書く際、薄い字で書かれているのを見たことがあるかと思います。
これは、悲しみの涙で文字がにじんでいる様子を表しています。また、悲しみを薄め流したいという意味や、墨をする(濃くする)時間を惜しんで駆けつけたという意図も込めているという説もあります。
そのため表書きは、薄墨の筆や筆ペンを使って書くのが一般的です。

2.表書きの書き方

弔事用は、表書きの違いが分かりにくいという方も多いと思います。(例えば、御仏前と御香典の違いなど)
まず、法要の場合は宗教によっても表書きの書き方やマナーが変わってきます。
ここでは、宗教ごとに対応の仕方についてまとめていきたいと思います。

宗教と表書き

通夜や葬儀に出席する際、故人の家族への相互扶助(葬儀は突然の出費のため)として現金を贈るのが一般的です。
宗教によっては慶事に対して同じ表書きになる場合もありますが、ここでは葬儀や通夜、またそのお返しとして使われる表書きについてまとめていきます。

宗教

表書き

目的

 

仏教

 

 

 

 

御霊前

シーン:葬儀や通夜
四十九日以前は故人がまだこの世に留まっているとの考え方から、御霊前を使用します。
故人の宗教が分からず迷った場合など、どの宗教であっても基本的に使える表書きになりますが、浄土真宗とプロテスタントは霊は存在しないと考えるため使いません。

御佛前(御仏前)

シーン:葬儀や通夜
仏教では、人は亡くなると霊となり、四十九日で成仏して仏になるとの考え方から、四十九日以降は御仏前を使用します。
ただし、浄土真宗では霊という考え方はなく、亡くなったとき成仏するとの考え方から、四十九日以前から御仏前を使いますのでご注意ください。

御香典・御香料

シーン:葬儀や通夜
仏教で、宗派が分からない時には御香典・御香料を使用していただければ問題ないでしょう。

シーン:香典返し・法事のお返し
香典返しや法事のお返しとして使用します。
四十九日を過ぎたら「忌明志」と書きます。

粗供養

シーン:香典返し・法事のお返し
当日返しなど、忌中に返礼品を贈る際に使用します。

茶の子

シーン:香典返し・法事のお返し
元はお茶やお茶菓子の意味ですが、中国・四国・九州の一部地域で法事のお返しや引出物、香典返しの表書きとして使われています。

神道

 

玉串料

シーン:葬儀や通夜
神道では、故人は神になると考えられているため、神様に捧げるものとして現金を贈る際に玉串料を使います。
仏教における香典・お布施と同じ意味になります。
神葬祭(葬儀のこと)の場合、御霊前・御神前・御榊料・御神饌料と記してもよいでしょう。
※玉串料は、神道においては結婚式やお宮参りなど神社での行事の際の捧げもの・神様への謝礼としても使用するため、弔事だけでなく慶事にも使われます。
余談ですが、葬儀の祭、服装は一般的な喪服で問題ありませんが、神道では数珠は使いません。

御供・奉献・奉納

シーン:故人へのお供え
法事のお供えとして使います。
東日本では「黒白5本結び切り」、西日本では「黄白5本結び切り」の水引を使用するのが一般的です。
蓮の花や百合の花が描かれたものは選ばないようにしましょう。

志・偲び草

シーン:法事のお返し
忌明けの香典返し、五十日祭、一年祭や三年祭などの年祭に渡す法事のお返しとして使います。
故人を偲んで追慕する想いや気持ちを品物として贈る場合の表書きです。キリスト教でも使えます。

 

キリスト教

御花料・御霊前
カトリック:御ミサ料
プロテスタント:弔慰料

シーン:葬儀や通夜
通夜・告別式・法要の際の弔慰金として使います。
仏教における香典と同じ意味合いです。
キリスト教では本来香典やお供えをするといった習慣はなく、ご焼香の代わりに献花を行います。
この献花と日本の風習である香典とが合わさって、現金を包んで贈る御花料が生まれたと考えられます。
本来なかった習慣のため、香典返しという概念も存在しません。

志・感謝・粗品・偲び草 シーン:御花料のお返し
キリスト教式の香典返しや法事のお返しとして使用します。
「黒白結び切り」「黄白結び切り」の水引を使用するのが一般的です。
     
     

シーンに適した贈り物は?

葬儀や通夜に参列する際、故人の家族へお渡しするものは現金が一般的ですが、遠方で参列が叶わない場合もあるかと思います。そんなとき、現金を書留で贈ることもあれば、郵送や宅配便でお悔やみの気持ちを品物で届けることもあります。また、故人との関係によっては法事や法要のためにお供えを持参することも増えると思います。そんなときには何を準備すればいいのか、何が適切で何がNGなのか迷ってしまいますね。
ここではシーンと贈り物についてまとめていきたいと思います。

宗教

シーン

贈り物

仏教

 

香典返し

日用品やお菓子、お茶など、不祝儀(不幸なこと)が残らないようにという意味を込めて「消えてなくなるもの」を選ぶのが一般的です。
香典返しの金額としては、いただいた金額の4分の1、金額が大きい場合は3分の1程度を目安にすると良いでしょう。

お供え
(法要の際の贈り物)

線香・花飾り・焼き菓子・ろうそく・果物など。
最近ではご遺族に選んでいただけるカタログギフトも選ばれています。
NG:弔事用の贈り物全体を通して言えることですが、)肉や魚、お酒などの嗜好品は一般的にタブーとされています。

神道

お供え

果物、お菓子、海産物、お酒、故人が好きだったものなど。
食べ物・飲み物を選ぶ場合は個包装のもので常温で日持ちするものを選びましょう。
(お煎餅、焼き菓子、羊羹、ジュースなど)
最近ではカタログギフトも人気があります。
金額的には5,000円〜15,000円程度のものが一般的です。
故人との関係や、玉串料として入れる金額などを考慮して決めるとよいでしょう。

キリスト教

お供え

品物を贈る場合、なまものやお酒はタブーとされていますが、タオルや洗剤などの日用品、他の宗教同様にカタログギフトなども選ばれます。
NG:なまものやお酒などの嗜好品。

     

【現金を贈る場合はいくらくらいが相場?】
お祝い事でもそうですが、具体的にいくら包むのが良いのかは身内に聞きやすい人がいなかった場合非常に悩ましいですよね。
基本的に、故人との関係が近いほど高くなります。

[血縁関係あり]
二親等の身内・その他親族…1〜3万円
両親…3〜5万円

[血縁関係なし]
友人の両親…5千円
会社関係者…5千円〜1万円
お世話になった方…3万円〜

簡単にまとめましたが、5千円〜10万円とも言われ、各々その関係性や、法事の際の会食の有無でも変わってきます。
お世話になった気持ちが強ければその気持ち分多めに包んだり、会食分気持ち多めに包むのも間違ったことではありません。自分の心に素直に故人を偲びましょう。

3.まとめ

今回は結び切りの水引タイプの熨斗について説明していきました。
不祝儀という一度きりが望ましい贈り物である分、相手への気遣いや気をつけるマナーが多くなります。
宗教も関わってくるため、一筋縄ではいかない部分もあるでしょう。
あくまでも故人を偲ぶ、お世話になったことへの感謝を伝えることが最も大切なことです。

以上、三回にわたって熨斗についてまとめてきましたが、お役に立てたでしょうか。
日本は本当に贈り物をする機会が多いので、スマートに贈り物ができる一助になれたら幸いです。
みなさまが贈り物で大切な人たちに気持ちを届けられますように。

 

▶蝶結び(花結び)について

▶結び切りについて

▶熨斗の小話

 

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この記事を書いた人

Motto: 猪突猛進の食欲モンスター

美味しいものやおしゃれなお店を見つけたら、どんなに遠くてもすぐに突撃してしまう癖がある。