九州産直通信

幻想的な「黒川温泉 湯あかり」は環境保全の証、大自然・阿蘇で生まれた温泉とグルメの話

熊本県の阿蘇北部に位置する人気の温泉街で、今年で10周年を迎えたイベントが行われています。それが「黒川温泉 湯あかり」。
球体状の鞠灯篭(まりとうろう)約300個と高さ2mほどの筒状の筒灯篭を自然の景観に溶け込むように配置し、温泉街を流れる田の原川いっぱいを光で包み込む幻想的なイベント。2012年にスタートして今年で10周年。原点回帰の意味を込めて、初期に実施していた川中の筒灯篭飾りを復活させました。灯りは夕暮れ時から22時まで点灯され、今年は4月3日まで毎日開催されています。

今や、黒川温泉は九州のみならず全国、あるいは海外からも観光客が訪れる日本屈指の人気温泉地となりました。
もともと熊本県北部の南小国温泉郷の一つとされていましたが、認知度の向上にともない「黒川温泉」ブランドが確立され格好です。2009年版ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでは温泉地としては異例の二つ星が付いたほど。評価された理由の一つが、自然の恵みを生かして「自然の雰囲気」を大切にした町づくり。

かつて黒川温泉は、ひなびた温泉地で、特に1960~1970年代にかけてはゴーストタウンになりかけるほど人気のない場所でした。
そこで温泉や自然という本来、町が持っている資源を観光に結び付けようと、旅館関係者や地元住民が手を取り合って、「自然の雰囲気」という共通コンセプトのもとに町づくり、温泉街づくりを進め、徐々に評価を獲得してきた経緯があります。地元の人々が一丸となって勝ち取った復活劇でした。今では「街全体が一つの宿 通りは廊下 旅館は客室」をキャッチコピーに訪れる人の心をつかんでいます。

自然を大切に人々を魅了している黒川温泉ですが、昨今ではその“自然”に関する問題が浮上してきました。それが竹害。黒川温泉も例外ではなく放置竹林は多く存在。成長の速い竹は持続的な維持管理を行わないと他の木々を枯らし、里山の環境を脅かします。
黒川温泉では環境維持のため竹林の間伐や再生に取り組んできましたが、実は「湯あかり」も、こうした活動の一環として計画されたのが始まり。湯あかりで使用する鞠灯篭は竹ひごを束ねて球体を作っており、「湯あかり」を通じて得られた利益をイベントの維持活動に役立てることで持続的な環境保全につなげているのです。

さて、黒川温泉は、広くは阿蘇温泉郷に含まれており、温泉街では阿蘇グルメを堪能することができます。その中の一つがあか牛丼。熊本阿蘇名産の「あか牛」を気軽にどんぶりで食べられる人気メニュー。黒川温泉郷にも専門店があるほど。もちろん、あか牛を使ったステーキやハンバーグもしっかりと食べられます。大自然・阿蘇で育ったあか牛の料理を、自然を大切にした温泉地で堪能できるなんて、想像するだけでも贅沢ですね。

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熊本の“肉”料理といえば、以前は「馬刺し」を思い浮かべる方が多かったのではないでしょうか。実は熊本では最近、「馬刺しvsあか牛」のちょっとした覇権争いが起こっています。伝統の馬刺しか、新参者のあか牛か。しかし実はいずれも歴史のある食材なのです。

馬刺しの発祥は熊本藩主の加藤清正が朝鮮出兵した際、朝鮮半島で食料がなくなり、しかたなく軍馬を食べたところ大変美味しかったという説。明治時代に入ってから熊本や阿蘇地域に広まっていき、昭和30年代に飲食店で登場するようになりました。
一方、あか牛のルーツは日本神話に登場する健盤龍命(阿蘇大明神)まで遡りますが、食用としてではなく、長く農耕・運搬など役用牛として飼われていたのが実情です。食用肉としては1937年に「褐毛系役肉用牛」として正式に誕生。黒毛和牛に比べると認知度は格段に低いのですが、赤みが多いので肉本来の味が楽しめたり、脂肪分が少ないので健康的との理由でじわじわと人気が出てきています。

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「馬刺しvsあか牛」の覇権争いはしばらく続くと思われますが、どちらが熊本名産として相応しいかは、結局のところ個人の好み。つまり、食べてみてから判断するしかありません。「馬刺し派」「あか牛派」と別れるかもしれませんが、「どっちも」相応しい、あるいは「これ以外」というのもあるかもしれません。是非この機会に、あか牛、馬刺しを中心に熊本グルメに触れてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

Motto: 走るライター

観光スポットを走りたくなる年頃。