和食に欠かせない「味つけ」の中で、醤油の存在は大きいかと思います。この醤油、原料は発酵させた大豆だということは、広く知られていますが、地域で色や味に大きな差もあるということ、ご存じですか?
ここでは、味も香りも個性ある九州の醤油についてお話しします。
九州醤油の特徴
色
関東以北の方々が初めて九州に訪れ、活きの良いお刺身を前にし、さてさてと。醤油差しを手にし、オテショ(小皿)にお醤油を注いだ瞬間!思わず、「うわっ‼これソースッ⁈」と、声を上げてしまうほど、それほど「黒い」と感じる色。
さしみ醤油は特に色が濃く、とろりと粘性があります。
この印象が強烈で、すべてのお醤油の色が「黒くて濃い」と思われがちですが、実は料理によって「濃い口醤油」と「薄口醤油」を使い分ける九州の醤油。真っ黒なものばかりではありません。
味
皆さんの印象に強い九州の黒いさしみ醤油。
中農ソース?と、おそるおそる指の先に付けてぺろりとなめてみると、「あれ?あまい?」と、思われるようです。
関東で一般的に使用される濃口醤油に比べ、塩味より明らかに甘さを感じるほど。この甘みが、九州醤油の特徴のひとつです。
関東醤油は、塩味が先に感じられるのに対して、九州醤油は、多くの人が甘みを先に感じるのではないでしょうか。
ちなみに、九州圏内でも南にいくほど甘みが増すといわれ、福岡より鹿児島の方がより、甘みが際立つようです。
香り
一般的な関東のお醤油とは違い、九州地方らしい独特な香りがします。理由は、地域によって発酵(麹菌)に特徴があるためです。香りも味にも違いがあるのです。
主観的なことなので、言葉で表し難いですが、日本酒の麹の香りの違いと同じように、フルーティーなものもあれば、少しウッディなものなど、「さまざまな香りがする」と言うのがしっくりきます。
また、九州圏内でも福岡や佐賀産のものは、香りが強いとも言われています。甘みある深いコクと豊かな香りが特徴です。
九州醤油の個性のワケ
一般的な醤油の原料は、大豆と小麦です。
関東地方で作られる醤油(本醸造醤油)は、この二つを原料に酒造りのように「麹菌」を足して発酵させて熟成します。甘味を使用しないスッキリとした味です。
一方、九州の醤油(混合醤油)は、「米麹」を使うのが特徴とされています。
独自の製法によって、麹菌の発酵により生成された糖化物質が甘みとなるため、甘さとコクのあるお醤油ができあがるのです。
九州醤油はバリエーション豊か
四方を海に囲まれた九州地方は、海の幸はもちろん、山間部にも美味しい山の幸が豊富です。
お醤油も、各地域での「こだわり」があり、原料は同じでも、配合や発酵方法など製法の違いで味や香りもさまざま。
地域の素材を活かすためのこだわりが強いのは、食いしん坊が多いのかもしれません。それだけ、多くの美味しい食べ物があるのかもと期待も膨らみます。
※ 醤油には、本醸造(約9割)、混合醸造(1%未満)、混合(約1割)の3種類があるそうです
おススメしたい!九州の老舗醤油店
たくさんあるお醤油屋さん。好みもありますが、ここでは歴史もある老舗のお醤油屋さんをご数店舗ご紹介します。
ご自身で試してみるのも、食通な方へお中元などギフトにもいいかもしれません。いつもと違った味を楽しんでみてください。
若竹醤油(若竹醤油有限会社・福岡県)
創業当時からの製法「天然醸造長期熟成」を100年守り受け継ぐ筑後地区を代表する醸造所。
公式HP (http://www.1wakatake.com/outline/index.html)
カノオ醤油(有限会社カノオ醤油味噌醸造元・福岡県)
玄界灘のほど近く自然豊かな糸島市にある醤油、味噌、麹づくり一筋という明治創業の老舗。
公式HP (https://www.kanoo-soy.com/html/page1.html)
田中醤油店(有限会社田中醤油店・大分県)
周防灘に面した穏やかな気候の大分県中津市にある明治創業の老舗。
公式HP (https://www.kanoo-soy.com/html/page1.html)
ヒシク醤油(安藤醸造株式会社・鹿児島県)
九州で最も甘い醤油?明治維新の混乱の中も庶民の台所を支え、今に続く150余年の歴史ある老舗。
公式HP (https://www.hishiku.co.jp/)
チョーコー醤油(チョーコー醤油株式会社・長崎県)
1941年、地元老舗醤油屋29軒が先代の味を守るため業界初の組合としてスタートした歴史を持つ。
公式HP (https://choko.co.jp/Pages/company/aisatsu.php)
あとがき
九州は、その昔、海外貿易拠点だった長崎を中心に異国の貿易品が往来した長崎街道がありますが、南蛮から伝わった菓子文化が広がったことから「シュガーロード」とも呼ばれています。
そのため、醤油もより高級で特別なものにしようと砂糖を加え、甘さをだしたという説もあります。何より、地魚をより美味しく食したいといったグルメな人たちの考案だったようです。
九州の素材を活かす「九州醤油」。未体験の方、この期にいかがですか?