九州産直通信

フルーツ加工品を積極的に食べて“畑の食品ロス”を解消しよう

「値引き販売」「てまえどり」など、広がる食品ロス削減の動き

食品業界では、食品ロス削減を目的にさまざまな取り組みが行われています。
身近なところでは、食品スーパー等で夕方以降に実施されている賞味期限が近くなったお弁当やお惣菜の値引き販売や、最近では、販売期限の迫った商品(手前の商品)を積極的に選ぶことを推奨する「てまえどり」もじわじわと普及。牛乳や卵など、購入してすぐ食べる食品は賞味期限を気にせずに手前から選ぶという購買行動を、環境省が中心となって啓蒙しています。

 
 
 

食品ロスとは?

食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。食品ロスの削減は、単に「もったいない」という理由だけではなく、食べ物を捨てることで、二酸化炭素を発生する焼却や処理が伴い、これにより環境へ悪影響を与えてしまうことが大きな問題とされているのです。
日本で食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの量は年間約570万トン(2018年度)。1人当たりの食品ロス量は1年で約45kg。これは毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと同じだそうです。ちなみに、世界中の食品ロスを二酸化炭素排出量に換算すると約33億トンと気の遠くなる数字ですね。

事業系は3分の1ルール解消、家庭系は意識向上がカギ

食品ロスには、事業活動をともなって発生する「事業系食品ロス」と、各家庭から発生する「家庭系食品ロス」の2つがあります。
事業系食品ロスで問題となっていたのが、小売店等で商習慣になっている「3分の1ルール」。これは賞味期限の3分の1が経過する前に、メーカーや卸売業者は⼩売店に納品しなければならないというもの。経過すると食べられるのに納品できないこの商習慣を変えるために、廃棄物の発生抑制を図る食品リサイクル法が施行された経緯があります。

一方、家庭系食品ロスでは、消費者の意識によるところが大きいため、「買い過ぎない」「作り過ぎない」、あるいは「過度な健康意識を改める」などの意識改革が求められています。値引き販売やてまえどり活動は消費行動ではあるものの、その先の消費者の意識向上が食品ロス削減にはとても重要です。とは言え、事業系、家庭系ともに食品ロスを削減できる余地は十分に残っているので、国や自治体、業界団体等を通じてさらなる活動の強化が期待されます。

農家×パティシエのコラボで“畑の食品ロス”解消へ

さて、事業系と家庭系と説明しましたが、実はもう一つの食品ロスも最近では注目されています。それが「畑の食品ロス」です。生産されたものの、何らかの原因で形や色、大きさ、傷や汚れなどで規格に合わず、食べられるのに出荷されることなく廃棄される農作物のことです。

畑の食品ロスを削減する方法の一つとして、近年、取り組みが広がってきているのが「商品性の向上」です。果物や野菜など規格外の農作物を加工品として有効利用するもので、6次産業化もこの取り組みの一環と言えます。

当店のある九州はフルーツ王国として知られていますが、畑の食品ロスの削減つながっている代表的な商品と言えば冷蔵柿ではないでしょうか。

福岡県は甘柿の王様として知られる富有柿の一大生産地ですが、この地域では、2回目の霜が降りる前の12月上旬に「かがりあげ」と呼ばれる全量収穫を行う作業があり、収穫後も鮮度を損なわず長く保存できる方法として1個ずつ個包装にして冷蔵庫で保存する「冷蔵柿」が開発されました。保存状態が良ければ3月~4月まで出荷でき、季節外れの希少品ということもあり高価に取引される富有柿としても定着しました。

食品ロスに取り組んで成功したケース

パティシエと農家が強力タッグを組んで食品ロスに取り組んで成功したケースもあります。梨の産地として知られる佐賀県伊万里市では、梨農家と人気スーツ店がタッグを組んで開発した「果実のチーズケイク」が大人気となっています。梨、いちご、桃の3種をコンポートにしてチーズケーキと合わせたスイーツ。梨農家の大川三世代さんが「農業をする方全てにおいて規格外があるので、これを何とかしたいなと前から考えていました」というように、廃棄される果実を有効することを考え作られた商品でした。

この他にも、規格外品が発生しやすいブドウやイチゴも、ぶどう酒やワインに加工されたり、ジェラートやリキュールとして製造・販売されるケースが増えています。九州各地のフルーツの里と呼ばれるエリアには、ジェラート店やスイーツ店、ワイナリーなども徐々に増えています。

食品ロス削減だけでなく水害対策などにも貢献

こうした「商品化の向上」を中心に、畑の食品ロスを削減する動きは加速しているように見えますが、残念ながらここ10年、大きな進展が見られないのも実情です。収穫量から出荷量を差し引いた畑の食品ロスの量は年間約200万トン。この10年間、数量は横ばいを続けており、長らく手が付けられてきませんでした。前述の成功事例はほんの一部に過ぎず、まだまだ取り組みとしては不十分のようです。畑の食品ロスを削減するには「商品化の向上」以外にも、「取引の簡素化」「流通の合理化」「出荷の簡素化」なども大切と言われていますので、総合的な施策が求められているのかもしれません。

生産者は毎年、自然災害や天候不順との戦いを強いられ、規格外が増えると収入も減えります。規格外品を商品化し収入につなげる仕組みが構築されると、生産者は安心して農業に取り組めるようになり、将来的な後継者不足も解消できるかもしれません。また、生産者を支援することは、田畑を耕すことにつながります。管理された田畑は天然の貯水池としての役割もあるため、食品ロスの削減に貢献するだけでなく、水害対策や安全な水の確保にもつながります。

私たち販売者や消費者にできることは、こうしたフルーツやスイーツをたくさん食べることではないでしょうか。可能な限り積極的に購入して、生産者の支援や社会貢献に少しでも貢献できたらと思います。

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この記事を書いた人

Motto: 走るライター

観光スポットを走りたくなる年頃。