九州産直通信

日本のだし文化のお話し[後編]こだわりの「九州だし文化」

日本の食文化に欠かすことのできない「だし(出汁)」。 

前編では、「日本のだし」を代表する、カツオや昆布だしの歴史やそれにまつわるお話をまとめました。後編では、九州ならではのだし文化のお話を展開していきます。 

▼前編はこちら
https://blog.otoriyose.site/kyusyustroll/1889/

九州のだし素材

もちろん昆布も、カツオ節も使いますが、日常的に良く使うのが「イリコ」。カタクチイワシの煮干のことです。西日本では「イリコ」と呼びます。 

その他にも、ムロアジ節やサバ節など、海に囲まれた土地ならではの魚素材が豊富です。 

九州は「だし」の効いた汁物が絶品 

こってり白濁スープの豚骨ラーメンや濃厚な醤油のイメージが強く、「しっかり濃い味付け」の印象が強い九州の味。確かに煮物など、家庭の味もしっかりこってり甘めな味付けが好まれますが、おでんやうどんといった「汁物」は、だしのうま味が際立つ「すまし仕立て」です。九州醤油から想像すると、不意を突かれる透明な汁。うま味たっぷりで、飲み干したくなるほどです。ぜひ、味わっていただきたい一押しの庶民の味です。 

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全国的に知名度を上げた絶品の「九州だし」

九州のだし素材の中でも、少し個性的な素材としてご紹介したいのが、「あごだし」。九州ではなじみある素材ですが、全国的に知られ、積極的に使われるようになったのはここ最近ではないでしょうか。 

あごとは、胸ビレを広げて海の上を飛ぶトビウオのこと。トビウオは、運動量が多いことから、雑味の原因となる脂肪分が少ないため、クセが少なく上品でスッキリとした「だし」が取れます。もちろん、うま味もしっかりとあるので、「アゴが落ちるほど美味しい」という評判から、「あごだし」と呼ばれるようになったという説があるほど。福岡県の郷土料理、「博多雑煮」に使うのもあごだし。長崎県の五島では、名物の五島うどんのだしとして欠かせない素材です。 

あごだしの種類 

一言で「あごだし」と言っても、実は製法違いで3種類あります。せっかくなので、種類別に製法と特徴をご紹介します。 

【焼き】・・・炭火であぶる「焼きあご」 

新鮮なトビウオを炭火などであぶり、火を通すことでギュっとうま味を凝縮させ、その後に天日で干し、乾燥させる≪焼き干し製法≫です。焼いているので香しさもあり、燻製とも違う風味がプラスされます。火で炙ることで、より魚臭さも少なくなるため、とても上品「だし」に仕上がります。本格的な汁物料理にとてもおススメです。 

【煮干し】・・・天日干しなどで乾燥させた「あご煮干し」 

一般的なイワシなどの煮干しと同じように、獲れた魚をゆで上げ、天日干しなどをして乾燥させたもの。一般的な「煮干し」に比べ、魚体が大きいのが特徴です。また、他の煮干しに比べて脂質が少ないため、魚臭さや酸化の進みが遅いのは利点でもあります。 

【燻製】・・・燻すことで水分をより蒸発させる「あごの燻製」 

カツオ節と同じように、ゆで上げた後に煙で熱し、じっくりと乾燥させる方法です。しっかりと水分がなくなることで、だしが取りやすくなると言います。燻製にすることで、焼きあごと違った香りが楽しめること。カツオ節よりも脂質が少ないので魚臭さも少ないことが特徴です。 

あごだしの歴史 

そもそも、「焼きあご」は、長崎県平戸市の名物。江戸時代には平戸藩内で作られ、江戸藩邸に届けていたという記録があります。江戸藩邸に届いた後、縁戚の大名家への贈り物として珍重されていたとか。 

福岡県では、「博多雑煮」のすまし汁に欠かせない素材でもあり、江戸時代の中頃には、年の初めの目出度い料理の素材として、庶民の間でも食されていたといいます。 

焼きあごづくりは秋の報せ

焼きあごに使うトビウオの漁期は、夏の終わりから秋にかけての2か月弱。この間に平行して、「焼きあご」づくりが行われます。新米の収穫時期と同じころで、秋の訪れを感じさせる風景です。市内の小学校では、昔ながらの焼きあごづくりを次代に残そうと体験教室も開いています。観光客用の体験もあるようです。 

【参考】新上五島観光協会
https://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/activity/10391

【参考】水産庁
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r02_h/trend/1/zoom_p1_1_2-02.html

「焼きあご」の上手なだしの取り方

・2つまたは3つに折る(一般的な煮干しよりもサイズが大きいため)
・できれば半日ほど水に浸けおく(1リットルに30gほど)
・黄金色のだしが出てきたら中火で温める
・煮立つ直前に火を止める
・そのまま10分ほど置きうま味を出す(焼きあごは煮出しません!!)
・キッチンペーパーなどでこす。 

※「焼きあご」は、丸ごと使えます。簡単に使える粉末パックなどの商品もあるので、チェックしてみてください。 

九州のシイタケも絶品 

大分県の特産物として広く知られるシイタケ。九州の山間部では、シイタケの栽培がとても盛んで、肉厚で良質なシイタケが豊富です。特に干しシイタケは特産品でもあり、郷土料理には欠かせない素材です。 

九州北部の代表的な郷土料理「筑前煮」(がめ煮)や大分県や熊本県の郷土料理「だご汁」、鹿児島県のさつま汁、だし汁をかけて食べる鶏飯(けいはん)など、多くの料理で干しシイタケの戻し汁を使います。 

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農林水産省「うちの郷土料理」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html

そのほかの九州のだし

・豚骨…九州と言えば豚骨ラーメン。九州全域で食されている豚骨スープは、まさに九州のだしと言ってもいいのではないでしょうか。こってりも、あっさりも、白濁スープはクセになる味です。ちなみに、透明スープの沖縄ソーキそばにも、豚骨を使用している店があるようです。 

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・鶏だし…九州の食文化に欠かせないのが鶏肉。郷土料理としても多くのメニューがあります。一緒に炊き込むことで鶏肉のうま味が具材にしっかりと染みわたる煮込みや炊き込み料理もありますが、シンプルに鶏のうま味を味わう料理として、はずせないのが「水炊き」。
専門店では、鍋を食べる前にまず食すのが、鶏ガラから取ったうま味たっぷりのスープ。儀式のように順番があり、スープをいただいてから(湯呑にほんの少し)具材を食すので、まさに五臓六腑に染み渡る「鶏のうまみ」です。 

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さて、九州のだしのお話しは、いかがでしたか。
一度は味わって頂きたい「九州だし」のうまさ!この機会にぜひ、食してみてくださいね。 

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この記事を書いた人

Motto: 食べるのも作るのも大好き

餃子好きで結成した食べ歩きの会で1晩に3店は食べ比べを楽しむことが喜び。食すのは餃子に限らない。